子どもたちの防災意識を高めるプログラムが実践されています。
ここでは、子どもたちは受動的に守られるだけの存在ではなく、能動的にも防災に関り得る存在として位置づけられています。

 

子どもが能動的に関わる防災教育

1 川崎市麻生区の公立幼稚園

川崎市麻生区の公立幼稚園では、子ども向けの防災教育が実践されています。
例えば、ガラスの飛散体験。
卵の殻を地震の際に飛散したガラスに見立て床に撒き、子どもたちは靴下のままその上を歩いてみます。当然、足に痛みを感じるのですが、その後上履きを履いて歩き、痛みを感じないことで、災害時に靴を履くことの大切さを体験します。
また、暗闇体験。
あえて暗闇をつくることで、子どもたちは停電時の暗さと怖さを体験します。このとき、保育士の方も子どもたちが落ち着くように配慮して声がけをします。

2 子ども防災ネットワークおかやま

全労済岡山県本部や県内のNPO団体などでつくる「子ども防災ネットワークおかやま」は、防災に関する出前授業を実践しています。
例えば、以下のようなプログラムを実践しているとのことです(引用元:子ども防災ネットワークおかやまのHP)。

  • 地震のこともっと知ろう ~ 地震発生!揺れたらダンゴムシ
  • 地震が収まったら ~ ケガをしないように避難しよう(たまごの殻踏み体験)
  • 誰かが助けを呼んでいるよ!(ジャッキを使った救助体験)
  • ケガをした時に役に立つもの作ろう!(包帯づくり)

ジャッキを使った救助体験や包帯づくりなどは、大人でもなかなか体験できません。大人顔負けの体験ですね。

 

学校教育法や幼稚園教育要領での位置づけ

学校教育法第23条は、幼稚園教育の目標の一つとして「安全な生活のために必要な基本的な習慣を養う」ことを掲げています。

第23条
幼稚園における教育は、前条に規定する目的を実現するため、次に掲げる目標を達成するよう行われるものとする。
一 健康、安全で幸福な生活のために必要な基本的な習慣を養い、身体諸機能の調和的発達を図ること。
二 ・・・

幼稚園教育要領も、この目標達成への指導内容の一つとして以下を掲げています。

危険な場所,危険な遊び方,災害時などの行動の仕方が分かり,安全に気を付けて行動する。

ここでご紹介させていただいた「卵の殻でガラス飛散の体験」「暗闇体験」等は、いずれも「災害時などの行動の仕方が分かり、安全に気をつけて行動する」力を高めるものです。学校教育法や幼稚園教育要領の内容も踏まえた素晴らしいプログラムだと思います。

 

まとめ

私が関与する裁判という局面では、子どもは守られるべき存在であることが強調されます。その前提があるからこそ、子どもを預かる幼稚園等には、被害を予見し、これを回避する対策をとるべき高度な注意義務が導かれるのです。その注意義務に違反したことで子どもに被害が生じれば、賠償を命ぜられることになります。
その前提が覆されることはないのですが、今回ご紹介のプログラムはいずれも子どもたちが能動的に防災に関わり得る存在でもあることを示すものです。
この体験は、在園中はもちろん、卒園後の生活にも活かされるでしょう。
子どもたちの可能性だけでなく、これを引き出す幼稚園教育の大きな可能性にも気付かされるプログラムでした。

 

編集後記

今回は、以下を参考にさせていただきました。
〇平成27年1月19日付日本教育新聞(川崎市麻生区の公立保育園について)
〇平成27年1月28日付産経新聞(子ども防災ネットワークおかやまについて)
恥ずかしながら私自身は直接お話しをお伺いしたわけではないのですが、今回ご紹介のプログラムに大変感銘を受けたため、早速ご紹介させていただいた次第です。
これらのプログラムについては、私も自ら体験できればと考えています。