平成28年6月15日、横浜市は、慢性的な保育士不足の解消に向け、一定の経験や専門知識がある保育士を対象に、新たな資格「(仮称)認定保育士」を導入するよう国に要望すると発表しました(読売新聞 平成28年6月6日付)。
国家資格である保育士の上級資格という位置づけで、同じ保育園や地域で働く保育士の相談を受け、人材育成も担うとのこと。
横浜市は「1級2級などの資格を全国一律で導入し、段階的な報酬増も図るべき」と述べていて、保育士の待遇改善も視野に入れています。

 

保育士の給与

かねてから安いと言われてきた保育士の給与ですが、実際にどのあたりに位置づけられるのか、厚生労働省の「平成27年賃金構造基本統計調査」より抜粋してみました。
「所定内給与額」(きまって支給する現金給与額のうち、超過労働給与額を差し引いた額)をみてみましょう。

賃金統計

勤務年数も一律ではありませんが、全産業の平均である30万4000円に比べて9万円も安い金額となっています。
保育士よりは若干高水準ではありますが、幼稚園教諭もあまり変わらない水準です。

 

「認定保育士」の導入は待遇改善の起爆剤になるか

保育園の収入は、お役所の定める公定価格によって決まり、これを「公費負担(いわゆる補助金)」と「保護者負担(いわゆる保育料)」で分け合っています。
「公費負担(補助金)+保護者負担(保育料)=公定価格」という図式ですね。
今回の「(仮称)認定保育士」の導入により、保育士の待遇を向上するためには、この資格を有する保育士を雇用することを、補助金の加算事由に加える必要があります。
「認定保育士」の導入が待遇改善の起爆剤になるかどうかは、行政全体がその導入に踏み切れるかのみならず、新たな加算事由にする等導入後の待遇改善にどう結びつけるかにかかっています。
横浜市の提案が、日本の行政全体を動かすことが期待されます。