平成28年1月15日(金)の午前8時50分ごろ、福島県の県道で幼稚園の送迎バスが乗用車と接触しました。バスには3~6歳の園児21人と添乗員女性が乗車していましたが、幸いけがはありませんでした。
警察は、バスが車線変更しようとして乗用車と接触したとみて原因を調べているとのことです。
これに先立つ午前2時ころには、長野県軽井沢町でスキーツアーの貸し切りバスが転落する事故が発生しています。
この事故では、複数の乗客の方より「多くの乗客がシートベルトをしておらず、車内で着用を呼びかけるアナウンスはなかった」との証言があり、バスでもシートベルトを締めることの大切さがクローズアップされそうです。
ただ、幼稚園の送迎バスには、通常シートベルトが設置されていません。
その分、園側には、より慎重な運用・運行が求められることになるでしょう。
法的にいえば、送迎バスの運用・運行には、幼稚園側に幼児の危険回避についてより厳格な注意義務が課されることになるでしょう。

 

幼児専用車での事故状況

平成15年~平成20年のデータですが、幼児専用車にける死傷者数は、以下のとおりです。
死亡0名
重傷4名
軽傷565名

最近でも、幼児専用車の事故は珍しくありません。

平成27年7月8日、幼稚園の送迎バスが、高速輸送システム(BRT)の連節バスのサイドミラーと接触しました(新潟市の交差点)。幸い、けが人はなかったとのことです。

平成27年11月2日、幼稚園の送迎バスが乗用車と衝突し、園児14人が病院に搬送されました(さいたま市の交差点)。

平成27年12月18日には、幼稚園の送迎バスと乗用車が衝突しています(木更津市の交差点)。バスには園児18名と運転手、引率の教員の計20人が乗車していましたが、7人がけがを訴え病院に向かいました。

 

幼児専用車にはシートベルトの設置義務なし

冒頭のとおり、幼児専用車には通常シートベルトが設置されていません。
それは、道路運行保安基準において、設置の義務づけから除かれているからです。
主な理由は以下のとおりです。

1 幼児専用車を利用する幼児(主に3歳〜6歳)は体格差が大きくベルトの適切な
使用は困難である。
2 車両火災などの緊急時には、乗車している幼児を迅速に車外に脱出させなければ
ならないが、幼児自らが容易に座席ベルトを外して脱出することは現状のシート
ベルトでは難しい。

平成24年、国は、シートベルトの設置義務づけを検討しています。
しかし、平成25年3月にとりまとめの「幼児専用車の車両安全性向上のための ガイドライン」では、見送られ現在に至っています。

 

運用・運行はより慎重に

シートベルトの設置が義務づけられていない分、実際の運用・運行はより慎重でなければなりません。
法律的にいえば、シートベルトが設置されない幼児専用車においては、幼児はより生命身体の危険ににさらされるのだから、その危険を回避すべき運用・運行上の注意義務は、より厳格に解されることになるでしょう。
実際、先ほどの「幼児専用車の車両安全性向上のための ガイドライン」でも、幼児の危険回避の見地から、「座席ベルトを装備しない幼児専用車の高速道路等の運行は避ける。」といった対策が示されています。

 

まとめ

以上のとおり、幼児専用車にはシートベルトの設置義務はありません。
ですが、その分、運用・運行にはより重い注意義務が課されることになるでしょう。運転により慎重を期すのみならず、運転手の健康管理といった安全面の運用にもより積極的であることが求められます。