先月末、日本弁護士連合会(日弁連)が、文部科学省に対し、「『スクールロイヤー』の整備を求める意見書」を提出しました。

「スクールロイヤー」ってなんでしょう?
学校運営にどう関わってくれるのでしょう?

幼稚園も、学校教育法第1条の「学校」ですから、無関係ではありません。

 

「スクールロイヤー」とは

スクールロイヤー」とは、
・学校で発生する様々な問題について、
・子どもの最善の利益を念頭に置きつつ、
・教育や福祉等の視点を取り入れながら、
・法的観点から継続的に学校に助言を行う弁護士です。

学校をとりまく問題は複雑化しています。
学校が社会的存在であることや、個々人の権利意識も高まりに照らせば、学校もこれまで以上にコンプライアンスへの意識を高めなければなりません。

その一方で、教員の負担も軽視できません。

そこで、法的観点から学校を支える専門家として、スクールロイヤーの役割がクローズアップされたのです。

私も、顧問先の幼稚園から多くのご相談をいただくなかで、「もっと早くご相談いただければ」と感じることは多く、このような形で専門家が関わることは有意義と考えます。

 

「スクールロイヤー」の役割は

スクールロイヤーは、教育や福祉等の観点を踏まえつつ、学校に対して法的観点から助言・指導を行うことで、子どもの最善の利益を図ります。

具体的な役割としては、以下が想定されます。

子どもの問題行動、親子の問題、その他子どもに関わる問題への助言・指導

例えば、以下が挙げられます。

①子どもの問題行動への学校ルール(校則等)の適用への助言
②いじめについての事実調査・認定、指導・支援方針へのプランニング、
 保護者への説明等に対する助言・指導

③重大事件等が発生した場合のマスコミ対応等への助言・指導

例えば、①の学校ルール(校則等)の適用については、かつて丸刈り、パーマといったみだしなみ、校則で禁じたバイクを運転したといった理由での退学処分等が、訴訟に発展したケースが多数あります。

保護者対応

例えば、保護者のいきすぎたクレームへの助言・指導が挙げられます。

保護者のいきすぎたクレームは、教員にとって大きなストレスとなります。
ただ、これを紐解くと、実は当初の段階で丁寧な説明を欠いたことが原因となっている事例も見受けられます。
早い段階でスクールロイヤーの助言を得ることで、当初より適切な対応ができれば、保護者との不幸な対立を回避できるでしょう。

園庭の遊具における事故で亡くなった園児の保護者が、幼稚園に対し、その不誠実な対応そのものについて慰謝料の支払いを求めたところ、裁判所は、保護者の主張を認め、園の不誠実な対応を慰謝料算定の要素にしたという事例があります。

このような事例を知る専門家より早期の助言を得られれば、ここまでの対立に至らなかったかも知れません。

体罰、セクハラ、指導上の問題等への対応

例えば、教員が、子どもに対し、教育課程や部活動中に体罰やセクハラ等を行うケースが挙げられます。

実際、部活動の体罰、教員によるセクハラのケースは枚挙に暇がないほどです。
スクールロイヤー助言・指導を得ることで、予防策を講じ、また被害にあった子どもへの適切な対応も望めます。

学校事故への対応

例えば、以下が挙げられます。

①事故の予防と法的責任の確認と対応
②事故の調査

本稿でも、うんていでの痛ましい事故消火器の落下による事故ついてお伝えしています。
スクールロイヤーが、このような事故を調査のうえ、周知することで、今後の事故を予防します。

 

なぜ、今「スクールロイヤー」?

なぜ、「スクールロイヤー」の整備が求められるようになったのでしょうか。

まずは、トラブルの未然防止です。

学校の問題はまずます深刻化・多様化し、法や法的価値観に基づく紛争解決や予防が求められるようになりました。
これらの事態に適切に対処するには、問題が深刻化する前に、法律の専門家が、日頃から学校の相談相手として、早期に関わり、子どもの最善の利益を考慮しながら助言する態勢が必要になります。

次に、教員への支援です。

日本の教員の1週間当たりの勤務時間は長く、特に課外活動の指導時間、事務時間が長いとの調査結果もあります。
スクールロイヤーが前述の役割を果たすことで、教員が子どものために費やせる時間を少しでも多くできることが期待されます。

 

「スクールロイヤー」はどう整備される?

学校との接点をどのように構築するかは未定ですが、例えば、以下が想定されています。

・地域ごとのブロックに担当弁護士を置く
・スクールソーシャルワーカーのように指定校に弁護士を配置する
・弁護士を拠点巡回させる

ただ、日弁連は、冒頭の「『スクールロイヤー』の整備を求める意見書」以下のとおり述べていて、幼稚園は当面は整備の対象とはならないようです。

なお、ここでいう「学校」とは学校教育法第1条の学校を意味しているが、当面は、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中朝教育学校、特別支援学校、高等専門学校での活用を想定している。

ただ、法的支援が必要なことは、幼稚園も変わりありません。
私は、幼稚園の前向きな運営に法的側面から役立てるよう、先ほど例に挙げた事項についても、数多くご相談いただいております。
いつでもお役立て下さい。