先日、横浜市内の幼稚園に伺い、現場で活動されている約30名の先生方を対象に講演をさせていただきました。

テーマは「事例で高める安全力」

テーマは以下のとおり、「事例で高める安全力」。

事例で高める安全力

これまで幼稚園、保育園、その他教育機関にて発生した約20の事故事例を、主に裁判事例からピックアップ、それぞれ以下の観点から解説しました。時間は約2時間です。

① 事実関係の概要
② その事例において予見すべきだった危険・結果(予見可能性)
③ 予見した危険・結果を回避するためにすべきだった対策(結果回避可能性)

事例で高める安全力 抜粋

 

目標は「知ること」ではなく「意識を高める」こと

この講演の目標は、「意識を高める」ことでした。
個々の事実関係はともかく、予見すべきだった危険・結果、これを回避するためにすべきだった対策は、解説を聞けば「それくらい分かりますよ。」といえるもので、目新しいことではありません。
しかし、「分かる」ことと「実際に予見できる、対策できる」ことには大きな隔たりがあります。
実際、東日本大震災において、園バスが津波に被災し園児の方々がお亡くなりになった件では、仙台地方裁判所は、「(幼稚園側が)ラジオや防災行政無線により津波警報等の情報を積極的に収集しなかった」ことが、園バスが津波に被災するという結果を招いたと指摘し、幼稚園に損害賠償責任を認めました(高等裁判所で和解が成立しています。)。
地震時にラジオ等で情報収集する、誰もが知識として身につけているはずのことでしたが、現実にはそれができなかったのです。

「分かる」ことと「実際にできること」、この2つをつなぐ要素は「意識を高める」ことです。「分かる」だけではなく、それがこの場所でこの瞬間にも起こることなのだと「意識を高め」ることで、危険・結果の予見やその回避を具体的に意識して行動できるようになり、それが「実際にできる」ことにつながるのです。

今回は、実際に起きた事例を数多く解説しました。先生方にも、高い当事者意識をお持ちいただけたのではと思います。

 

法的リスクと教育のバランス感覚

講演終了後、園長先生より「幼稚園教育には危険な場所、危険な遊び方を予測して行動する力を身につけさせることも含まれる。そのうえで、危険を理由に全てをやめさせるのか、それとも安易に禁止せず先生方でフォローすることで事故を防止するのかを考えていかなければならない。」とのお話がありました。
法的リスクを踏まえた教育内容の検討、現場の先生もこのようなバランス感覚をお持ちになることで、幼稚園の安全力もどんどん高まっていくでしょう。
私にとっても、大変有意義な講演となりました。ありがとうございました。

 

まとめ

幼稚園の安全力の向上には、安全への意識を高めることが必須です。
ご用命いただければ、伺った、ご要望に沿って安全への意識を高める講演をさせていただきます。もちろん、その他のテーマでも結構です。お気軽にご用命ください。

 

編集後記

平成27年3月20日、東日本大震災において、保育園が津波に被災し、園児の方々が亡くなった件について、仙台高等裁判所は保育園側の法的責任を否定する判決をくだしました。これまでご紹介した幼稚園の事例とどこが違うのか、追ってお伝えできればと思います。